この作曲家に注目!
古い作曲家にもあまり知られていない名曲はありますし、新しい音楽といえば全部「十二音」かというと、そうでもありません。自分の耳で音楽を素直に聴くことから始めてみましょう。きっと人間の感性について何か分かるに違いありません。このページは、あまり普段は取り上げられることのない作曲家の作品を1曲でも多く紹介することを目的としています。
Vasily Sergeyevich Kalinnikov ヴァシリー・カリンニコフ(1866-1901)
チャイコフスキーとともにモスクワ折衷派を代表する作曲家。「その早すぎた死はロシア音楽界に深刻な影響を与えた」と言われる。イリンスキー並びにブララムベルグに師事。
1893年よりイタリア歌劇場副指揮者を勤めるが病を得てクリミアへ引退。以後死にいたるまで作曲に専念した。代表作は交響曲第1番、「杉と椰子」。前者が圧倒的な人気を誇り、戦前よりしばしば演奏会の演目を飾っていた。ロシア歌謡の哀愁とロシア歌劇の劇的表現を取り入れた名曲である。
昔の人が知っていて現代のいわゆる「クラシック・ファン」が意外と知らない作曲家。
Amy Marcy Beach エイミー・ビーチ(1867-1944)
アメリカ合衆国のピアニスト・作曲家。旧姓はマーシー=チェニー(Marcy Cheney)。まず「ピアノ五重奏曲」が素晴らしい。フランス的な香りの中に深い情緒を感じさせる音楽で、一度FM放送で流れた時には「ショーソンの作品か?」
と一瞬思ったほど。ピアノ曲も Hildegard Publishing Companyより2冊刊行されている。ピアノ協奏曲も表情豊かで一聴の価値あり。
参考サイト:
ピアノの19世紀(PTNA)
エイミー・ビーチ(Wikipedia)
Louis Vierne ルイ・ヴィエルネ(1870-1937)
近代フランス・オルガン楽派の重要な作曲家。フランクの門下とよく記述されるが実際は1か月で師が亡くなってしなったため、ヴィドールの元で学んだ人である。
オルガン交響曲も素晴らしいが、「ピアノ五重奏曲」の美しさは特筆ものである。
Dohnányi Ernö エルネー・ドホナーニ (1877-1960)
バルトークの伝記を読むと、友人として登場してくることで知られている。(1899年、18歳の時バルトークはウイーンの音楽学校に入ろうとしたが、ドホナーニの反対で結局ハンガリーの音楽学校、ブダペストの王位音楽院に入ったという話。ウイーンの音楽学校は国際的すぎるので、ハンガリー人としての音楽がだめになるということだったそうだ)。バルトークがハンガリー愛国的作曲家だったのに対し、ドホナーニはブラームスの流れの上にある後期ロマン派作曲家で、ピアニストとしても高名だった。弟子にゲザ・アンダ、アニー・フィッシャー、ゲオルグ・ショルティなどがいる。最初の出版作品≪ピアノ五重奏曲
第1番 ハ短調≫作品1は、ブラームスにより称賛され、その尽力でウィーンでも演奏された名作で、2曲のピアノ五重奏曲、ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタなどの室内楽作品のほか、ピアノ曲に佳作がある。「主題と変奏
Op.4」は必聴!。 参考サイトこちら。
Reinhold Gliere レインゴリト・グリエール (1875-1956)
ロシアの作曲家だが、わが国ではほとんど知られていないと言ってもよい。この人についてはWikipediaの記述など参照して頂きたいが、 「革命前夜にはロシア国民楽派の旗手として、革命後には共和国出身作曲家の目標になった男」という言い方がよく彼のことを表していると思う。3曲の交響曲がロシア的情緒にあふれた名作。
Gerald Finzi ジェラルド・フィンジ(1901〜1956)
イギリス音楽愛好家の間では有名だが一般にはまだまだである。チェロ協奏曲、ピアノと弦楽合奏のための「エクローグ Eclogue(田園詩、牧歌)」などを聴くとこの人の特質がよく分かると思う。
参考サイト
Ester Mägi エステル・マギ (1922〜)
エストニア音楽初の女性作曲家。タリンでサルト・サールに、モスクワでヴィサリオン・シェバリーンに学んだ。ピアノ曲「いにしえのカンネル(1985)」が素晴らしい。
参考サイト
Lowell Liebermann ロウェル・リーバーマン(1961〜)
スティーブン・ハフが2001年6月13日のNHK交響楽団定期演奏会で演奏した「ピアノ協奏曲第2番」の印象が今でも鮮明に残っている。リーバーマンはニューヨーク生まれの作曲家。作曲をデイヴィット・ダイヤモンド、ヴィンセント・パーシケッティに学び、ジュリアード音楽院から博士号を授与された。N響でティモシー・ハッチンスが演奏した「フルート協奏曲」もすばらしい。
参考文献:
磯田健一郎 『近代・現代 フランス音楽入門』 音楽之友社 1991
宮本孝正 『二十世紀音楽の楽しみ』 審美社 1993
200CD「音楽史を聴く」編集委員会『200CD音楽を聴く』 立風書房 1996
山尾敦史 『近代・現代 英国音楽入門』 音楽之友社 1998
金澤攝 『失われた音楽』 龜鳴屋 2005
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