1972年の録音。私がこの演奏を聞いたのは中学生のころである。当時、この名曲に関してはルービンシュタイン、リヒテルなどが名演と言われており、のちにアシュケナージ、キーシン等の名盤が登場した。
最近はアナログのディスクばかり聴いていることもあり、古い録音を引っ張り出して聴いてみたところ、これが素晴らしかったのだ。まずワイセンベルクのピアノだが、この人の演奏に関しては昔はかなり人気があったように記憶している。私の友人ピアニストにも「最も好きなピアニスト」としてこの人の名を挙げている人がおり、熱烈なファンはまだいるようだ。ただ、ラフマニノフ「前奏曲集」の録音などを聞いてみると、すべての音がクリアに聞こえる反面、もう少し歌心の表現はないものかという気持ちになることもある。有名な「プレリュ−ド・マーチ」の終わりを f にしたり、現代となってはかなり変わった表現も見られるし、こういう演奏を好んで聴く気にはなかなかなれないという印象を以前は持っていた。
ところが、ピアノ協奏曲となると話は別で、カラヤンの音楽観と見事に一致した素晴らしい世界がここにはあると思う。LPディスクの解説(高崎保男氏による)にそのあたりのことが的確に述べられていると思うし、ワイセンベルクのピアニズムについてはこういうサイトの論説が参考になる。グレン・グールドが賞賛しているというところが面白い。
演奏は、ラフマニノフの息の長いカンタービレが美しく表現されたもので、とくに第2楽章の透明な美感ともいえる音楽が印象に残った。ワイセンベルクのラフマニノフ演奏は「第3番」にバーンスタインとの共演があり、これも素晴らしい。他の録音も聞いてみたいと思う。
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