魅惑のデュオ(5)テツラフ兄妹


    昔はFM放送を聴くのが楽しみだった。というのはレコード(LPディスク)が高価なため、いわゆる「エア・チェック」に頼ることが多かったためである。チューナー、アンプ等を設置すればあとはほとんど無料で音楽が聴けるのは嬉しかった。ただ、電波の具合が悪い場所だと音が歪む。私が子どもの頃暮らしていた場所は中山間地のためFMの電波具合が悪く、大変困った。アンテナの向きを変えてみる、前橋ではなく水戸FMを聴いてみる、あるいはステレオ放送をモノーラル受信すると少し音質が改善する、などいろいろ努力したものである。
    その後、高校生から習志野市で暮らすようになり、ここはFM東京も聴くことができたのは嬉しかった。ベーム指揮のウィーンフィル公演を(抽選に外れたため)自宅で聴いたときの感動は今でも忘れられない。大学以降は東京都、埼玉県で暮らしたがここもFMはよく聞こえた。
    最近はインターネットという便利なものがあり、聞き逃し番組もあとでゆっくり聞くことができる。このページはしばらく更新できなかったが、以下の放送が印象に残ったものである。

・ ヴィルサラーゼ ピアノリサイタル(2014.2.3 すみだトリフォニーホール)
・ 阪田知樹 ピアノリサイタル(2022 ハクジュホール)
・ 永野英樹 ピアノリサイタル(2023 東京文化会館)
    最初のものはかなり前に録音していたのだが、忙しさのため聴くことができなかった。最近はこういう録音もゆっくり聞いている(もちろんオープンリール録音です)。
  さて、今回聴いたのは以下の番組である。
NHK-FM 2024年10月25日放送 魅惑のデュオ(5)テツラフ兄妹
ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン) 、ターニャ・テツラフ(チェロ) 、プラハ放送交響楽団、エヴァ・オッリカイネン(指揮)、2023年12月18日、ドヴォルザークホール
    この曲はブラームス作品のなかでも大好きな曲で、レコードもオイストラフ/ロストロポーヴィチ盤(セル/クリーヴランド管)、ボスコフスキー/ブラベッツ盤(フルトヴェングラー/ウィーン・フィル)、ムター/メネセス(カラヤン/ベルリン・フィル)など数多く持っている。FM放送でかつて聴いたクレーメル/ヨー・ヨー・マの演奏も素晴らしかった記憶がある。
    今回のテツラフ兄妹の演奏は、基本的に自然な表現のなかにもスケールの大きさを感じさせるもので、この曲の価値を再認識することができたと思う。会場の響きも豊かなのが好ましいし、両奏者の音が実に素晴らしかった。また聴いてみたいと思う演奏家である。
    この演奏会では、後半でベルリオーズの「幻想交響曲」が演奏された。オッリカイネンという指揮者による演奏は初めて聞いたが、細部を非常に大事にしながら音楽を構成していく本格派だと感じた。今後も注目される指揮者だと思う。

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